訪問介護「手順書の書き方」具体的に解説|目的 ステップ ポイント紹介

介護の仕事

記録をとりながら高齢夫婦と会話する介護士

訪問介護は、ご利用者様一人ひとりに合わせた個別のサービスを提供しますが、介護職員の経験や能力によってサービスの内容や質が左右されてしまう可能性があります。

そこで重要になるのが、手順書の作成です。手順書があれば、どの介護職員が訪問しても、指示された内容を実施でき、サービスの質を保つことにつながります。

ただ、実際に手順書を作成する介護職にとって、
「わかりやすい手順書の書き方がわからない」
「作成した手順書が現場で活用されているか不安」
といった悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、訪問介護における手順書を作成する目的を確認したうえで、手順書の作成5ステップと作成する際のポイント3つをくわしくお伝えします。

お伝えするポイントを押さえて作成することで、サービスの質の向上につながる、わかりやすい手順書を作成できるでしょう。
ぜひ参考にしてみてくださいね。

参考:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」

手順書を作成する目的3つ

玄関にて高齢者に挨拶をする介護士

訪問介護で必要な手順書(指示書)とは、介護職員が提供するサービスをどのような手順でおこなうのかを具体的に記載した文書のことです。

訪問介護の手順書を作成する主な目的は、以下の3つです。

1.利用者のニーズに合わせたサービスを提供するため
2.サービスの質の標準化や向上、事故防止のため
3.法令遵守のチェックや運営指導の対応のため

ひとつずつ確認していきましょう。

ご利用者様のニーズに合わせたサービスを提供するため

前述の通り、手順書があることで、介護職員の経験年数に関わらず、ご利用者様一人ひとりのニーズに合ったサービスを提供できます。担当の介護職員が急に変更になった場合でも、ご利用者様に合わせたサービスを継続できるのです。

ご利用者様のニーズに合った手順書を作成するためには、身体状況、認知機能、生活習慣などを踏まえ、個別に必要な支援内容を明確に記載することが大切です。

また、介護技術だけでなく、コミュニケーションの方法や環境調整についても記載しておくと、より実践的でわかりやすい手順書になるでしょう。

<例>
朝9時にご利用者様の自宅に伺い、挨拶・入室。健康観察・検温・血圧測定・車椅子への移乗までおこなう場合。

時間内容備考
9:00到着・入室・チャイムを鳴らし、明るく元気な声で挨拶する。
・ 玄関先で手指消毒をおこなう。
9:00~9:05挨拶・昨日の様子や今日の予定などを聞く。
・話しかけるときは、目を見ながらゆっくりとはっきり話す。
9:05~9:10健康観察・顔色や声の大きさ、表情などを観察し、違いがないか確認する。 
(普段は顔色よく、声大きめ、はっきり話す)
・体調の変化や気になることがないか聞く。
9:10~9:15検温・血圧測定・体温計と血圧計を準備し測定をおこなう。
(体温計と血圧計はベッド横の棚の上)
・測定結果を記録し、前回と比較して異常がないか確認する。
9:15~9:25車椅子への移乗・移乗を始める前に「病院に行くから、車椅子に乗りましょうね」と声をかける
・車椅子のブレーキがかかっているか確認する。
・身体に負担をかけないように、動作はゆっくりと丁寧におこなう。
9:25~9:30車椅子の姿勢調整・背もたれ、足置き、シートベルトなどを調整し、「きついところはないですか?」など確認しながら、快適な座り心地にする。
・体調に合った姿勢にする。
(腰当てのクッションやひざかけは、ベッド横の棚一番下の引き出しにあるので、必要か確認する)

※ご利用者様の体調や状況に応じて記載してください
※施設のフォーマットに合わせて参考にしてください

サービスの質の標準化や向上、事故防止のため

手順書には事故防止の目的もあります。
状況や状態に合わせて、事故を未然に防ぐための対策を手順書に盛り込むことで、ご利用者様の安全を確保したサービスが提供できます。

<例>
車椅子を利用するご利用者様の入浴介助をする場合。

時間内容備考
9:45入浴準備・浴室の温度を25℃程度に温める。
・床に滑り止めマットを敷く。
・シャワーチェアを準備する。
・脱衣所に下着(オムツや尿取りパッド)と着替えの服を準備する。
(ベッド横のチェストにある)
10:00移動(ベッドから車椅子へ)・身体に負担をかけないように、動作はゆっくりと丁寧に。
・車椅子のブレーキがかかっているか確認する。
10:05脱衣・上衣は脱いでもらい、下衣は脱衣を手伝う。
(上衣は一人で着脱可能。ズボンをおろして下まで下げるところが難しいため、おろして足から外すところを手伝う)
10:10脱衣所から浴室への移動・手すりにしっかりとつかまって、ゆっくりと移動する。
・転ばないように体を支える。
10:15~シャワー・洗髪 入浴・温度やシャワーの水圧を強くしすぎない。
(赤いテープで印を貼っているところまで)
・シャンプーは、必要に応じておこなう。
10:35・体を洗う際は、泡立てたタオルで優しく洗う。
・浴槽にゆっくりと浸かる。(手すりを持って)
・入浴時間は、10分程度を目安とする。
10:35体を拭く・バスタオルで体をしっかりと拭き、水分を残さない。
・特に、背中や首筋など、冷えやすい部分は念入りに拭く。
10:40浴室から脱衣所への移動・手すりにしっかりとつかまり、ゆっくりと移動する。
・必要に応じてサポートする。
10:45着替え・ズボンをはいて上げるところは難しいので、やさしく手伝う
10:50髪を乾かす・椅子に座ってドライヤーで髪を乾かす。
・熱風を直接当てないように注意し、低温でゆっくりと乾かす。
11:00移動(車椅子からベッドへ)・車椅子のブレーキをしっかりとかける。
・身体に負担をかけないように、動作はゆっくりと丁寧にする。
11:05水分補給・水分補給(コップ1杯程度)
(コップはキッチンの食器乾燥機内にある)
11:10入浴後の様子観察・体調や気分の変化がないか確認する。
・入浴後の体調不良に注意する。

※ご利用者様の体調や状況に応じて記載してください
※施設のフォーマットに合わせて参考にしてください

法令遵守のチェックや運営指導への対応のため

訪問介護事業者は、関連法規や運営基準を遵守してサービスを提供しなければなりません。

手順書は、法令遵守しながらサービスをおこなっていることの確認として活用できます。

行政による運営指導の際も、手順書を提示することで適切なサービス提供をおこなっていることを証明できます。

法律やご利用者様の状況は、変化していくものです。
手順書がご利用者様のニーズや状態にあっているか、法令遵守しているかどうかなど、定期的にチェックしていきましょう。

以下、手順書のチェックをする方法やタイミング、チェックするときのポイントをまとめました。

方法タイミング詳細ポイント
サービス利用記録のレビュー随時記録内容が正確かつ詳細に記載されているか、介護計画に沿ってサービスが提供されているかを確認する。記録内容だけでなく、ご利用者様や家族の意見も参考に評価する。
訪問介護員との定期面談月に一度、または必要に応じて設定訪問介護員と面談をおこない、サービスの質や利用者の反応について話し合う。具体的な事例を共有しながら、課題や改善策について話し合う。
ご利用者様や家族からのフィードバック収集サービス提供後、定期的に。または随時ご利用者様や家族にアンケートを実施したり、直接フィードバックを求めたりする。アンケートだけでなく、個別面談や電話での聞き取りなども活用する。

上記の方法は、あくまでも一例です。
手順書の運用については、施設の状況に合っているかどうか、定期的に手順書を見直し、改善していくことが大切です。

参考:厚生労働省「訪問介護におけるサービス提供責任者について」
参考:厚生労働省「安全衛生規程_改2」

手順書の作成方法5ステップ

パソコンに入力している介護士

手順書を作成する目的を確認したところで、ここでは手順書の作成方法をお伝えします。

以下の5ステップに沿って作成するとスムーズです。

1.ニーズと目的を明確にする
2.現状分析をおこない課題を明確にする
3.手順書の内容を検討する
4.手順書を作成する
5.導入後は改善を続ける

ひとつずつ確認していきましょう。

1.ニーズと目的を明確にする

まず、手順書を作成する目的を明確に設定しましょう。

ご利用者様のニーズと目標を具体的に定めることで、担当する介護職員が変わっても、質の高いサービスを提供し続けることができます。

  • ご利用者様情報:氏名、年齢、介護度、主介護者、主な疾患、特記事項
  • ニーズと目標:食事、入浴、排泄、移動、家事援助など、具体的な支援内容と目標設定

2.現状分析をおこない課題を明確にする

ご利用者様の状況を正確に把握し分析することで、課題が明確になり、必要な支援内容が見えてきます。

介護職員への聞き取りをおこない、現在のサービス提供状況を把握します。

記録内容の不備、サービス提供の不均一性、ご利用者様満足度の低下など、問題点や課題を洗い出しましょう。

3.手順書の内容を検討する

手順書に記載する内容を具体的に検討します(例:サービス提供の流れ、必要な用具、注意事項、記録方法など)。

検討する際は、ご利用者様のニーズや家族の意見を参考にしたり、必要に応じて介護保険法、介護サービス事業者の運営基準など、関連法規や規則を確認したりしながら進めましょう。

また、それぞれのサービスにかかる時間を考慮し、余裕を持ったスケジュールになっているかも確認が必要です。

4.手順書を作成する

手順書を作成する際は、誰が読んでも理解しやすいよう、簡潔な文章と見やすいレイアウトを心がけましょう。
室内図やイラストなどを活用すると、視覚的にわかりやすくなります。

確実におこなう行程が多いサービスの場合は、チェックボックスを設けることで、漏れなく実施できたかを確認できます。

5.導入後は改善を続ける

作成した手順書を現場に導入し、運用を開始します。

ご利用者様の健康状態や状況は変化するため、一度作成したら終わりではなく、定期的に運用状況を評価し、必要に応じて手順書を修正していくことが大切です。

職員への研修や教育もおこなって手順書の重要性を理解してもらい、質の高いサービス提供につなげていきましょう。

参考:厚生労働省「安全衛生規程_改2」

手順書を作成する際のポイント3つ

ノートとシャープペンシルの横にPOINTと書かれた木製キューブ

手順書を作成する際は、以下のポイントを押さえることでよりわかりやすくなり、ご利用者様に合ったケアの提供につながります。

  • 明確性
  • 具体性
  • 柔軟性

それぞれのポイントについて、くわしく見ていきましょう。

ポイント1:明確性

手順書は、誰が読んでも理解しやすいように、明確でわかりやすい言葉を使って書くようにしましょう。

<例>

  • 「清拭」→「体を拭く」
  • 「頓服」→「必要に応じて服用する薬」

サービスを提供している際は、じっくりと長文を読み込む時間はありません。
1文は30字程度を目安にして、簡潔にまとめたり、箇条書きや見出しを活用したりすると、パッと見てわかりやすく理解できます。

明確でわかりやすい手順書は、サービスの質向上、ご利用者様への安心感の提供、業務効率化などにつながります。
実際にサービス提供する介護職員が迷わずに動けるような表現になっているか確認しながら作成しましょう。

ポイント2.具体性

手順書には、必要な材料や道具、注意点なども具体的に記載し、手順書を読んだだけで、誰でも同じようにサービスを提供できるようにします。

<例>

  • 食事介助の手順書:食事の準備、食事介助の方法、食事後の片付けなど、どこに何があるのか、誰がどこまでするのか、どのように介助するのかなど、具体的記載する。
  • 車椅子の移乗介助の手順書:移乗前の準備、移乗中の注意点、移乗後のケアなど、詳細を記載する。

前述したように、「どこに何があるか」など、図表やイラストで説明を入れると視覚的にわかりやすくなるため、必要に応じて取り入れていきましょう。

タブレットを使用できる場合は、写真や動画を活用するのも効果的です。

ポイント3.柔軟性

ご利用者様の状態や環境は変化します。

5ステップでお伝えしたように、手順書は定期的に見直しをおこない、必要に応じて更新する柔軟性を持たせることが大切です。

具体的には、半年ごと、1年ごとなど、期間を決めて定期的に見直しをおこなうとよいでしょう。

新しい介護技術や機器が導入された場合や法令・規則が改正された場合は、速やかに手順書の内容を修正し、周知させます。

参考:厚生労働省「安全衛生規程_改2」

まとめ

記録を取りながら高齢者と対話をする介護士

この記事では、訪問介護における手順書の目的や作成手順、作成する際のポイントについてお伝えしました。

手順書は、介護の質を保ち、ご利用者様が安心してサービスを受けられるための重要なツールです。

質の高い訪問介護サービスを提供し、ご利用者様の暮らしを支えるために、手順書を有効に活用していきましょう。

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