介護職として働いている方々の中には、「いつかはケアマネジャーの資格を取りたい」と考えている人も、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
もっていれば活躍の場が広がるケアマネジャー(介護支援専門員)資格ですが、試験を受けるには一定の受験資格を満たしている必要があります。
その受験資格が改正され、2018年10月に実施予定の試験から新しい内容で適用されます。このコラムでは、「昨年までと今年では、受験資格がどう違うの?」「今年のケアマネジャー試験合格にむけて注意すべき点は?」などの疑問や、受験資格が改正された背景などについてもご紹介します。
ケアマネジャーの受験資格、ここが大きく変わった
大きく改正された点は、これまでは受験資格として認められていた「無資格で介護業務に10年以上従事した」「介護職員初任者研修・ホームヘルパー2級・実務者研修等の資格を保有していて、5年以上介護業務に従事した」等の人たちが、2018年以降は受験資格対象から外されること。
2018年以降にケアマネジャーの受験資格を得るには、まず介護福祉士などの国家資格を取得してから、さらに5年の経験を積むことが必要になります。
2017年までの受験資格(下記のいずれかを満たす)
1.国家資格等に基づく業務経験5年
国家資格(※1)を保有かつ、各資格の業務に5年間従事した者。
2.相談援助業務経験5年
介護施設などで相談援助業務に5年間従事する者。
3.介護資格+介護等業務経験5年
介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)等の資格を保有していて、5年間介護等の業務に従事した者。
4.介護等業務経験10年(無資格可)
10年間介護等の業務に従事した者。
2018年からの受験資格(下記のいずれかを満たす)
1.国家資格等に基づく業務経験5年
国家資格(※1)を保有かつ、各資格の業務に5年間従事した者。
2.相談援助業務経験5年
相談援助業務に従事した期間が通算して5年以上であり、かつ当該業務に従事した日数が900日以上であること。
- 生活相談員(ソーシャルワーカー)
- 支援相談員
- 相談支援専門員
- 主任相談支援員
※2017年までの受験資格3と4は資格要件から除外
(※1)医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、管理栄養士、精神保健福祉士
介護福祉士の受験資格として3年以上の実務経験と実務者研修が必要となるため、未経験から介護の仕事を始める人なら、受験資格取得までは最短で8年間かかります。
【モデルケース】
3年間、介護の現場で経験を積む(この間に実務者研修を履修)→介護福祉士の資格を取得→介護福祉士の資格取得から5年、介護の仕事に従事→ケアマネジャー受験資格を取得。
すでに3年以上介護の現場で働いている人や、介護福祉士養成施設を卒業した人などは、最短で5年です。
注意してほしいのは、業務従事期間はケアマネジャー試験の前日まで数えられる点。「5年(または900日)には足りなさそう」と諦めるまえに一度、試験の前日まで入れて計算してみてください。
そして改正点はもう1つ。これまで介護福祉士などの国家資格をもつ受験者は、試験項目が一部免除されていたのですが、この免除も廃止になります。
介護福祉士や社会福祉士などの国家試験の取得+5年の経験が必須、さらに試験項目の一部免除も廃止となっては、ケアマネジャー受験のハードルが上がったようにも思える今回の改正。
そもそも介護業界は人材不足といわれています。なのになぜ今、ケアマネジャー試験の入り口を狭くするような改正が行われたのでしょうか?
ケアマネジャーの受験資格が改正される背景
ケアマネジャーの受験資格の改正が行われた背景には、今後ますます大きくなる介護ニーズへの対応に、ケアマネジャーのさらなる活躍が期待されていることがあります。
2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、介護や医療を必要とする人がさらに増えることが予想されます。しかし入所型の介護施設は数に限界があるため、施設でのケアだけでは間に合わなくなることも。また医療の面でも、病院やベッド数をつぎつぎと増やしていくわけにもいきません。
その対策として期待されているのが、高齢者の在宅ケアを中心にした「地域包括ケアシステム」。高齢者に住み慣れた自宅で自分らしい暮らしを送ってもらいながら、地域で介護・医療のさまざまなサービスを提供し、高齢者の健康と生活をサポートしていくことが目的です。
地域包括ケアシステムの実現には、介護と医療のサービスの密な連携が欠かせません。例えば退院後、一人暮らしの自宅に帰る高齢者にとって、どうやって生活していくかは切実な問題。
これまでは入所型の介護施設を利用すれば、施設が提供するさまざまなサービスによって、1つの場所で介護も、生活支援も、医療もケアできました。
しかし2025年に向けて、国が進めていこうとしている地域包括ケアシステムでは、いくつもの機関や施設からそれぞれのサービスを受けることになります。
そこで今まで以上に重要になるのが、利用者と介護・医療のサービス提供者の橋渡しとなって、最適なサービスが受けられるようにコーディネートするケアマネジャー。
各サービスの垣根をこえて動けるケアマネジャーは、地域包括ケアシステムの中心となる働きを期待されています。
今回の受験資格の改正も、より多くの分野にまたがる専門的な知識と、豊富な経験をもつケアマネジャーを育て、これからどんどん活躍してもらいたいという期待がもとになっているのです。
ケアマネジャー試験、これまでの傾向
ケアマネジャー試験の出題形式について、参考として2017年度に行われた内容をご紹介します。
マークシートで五肢複択方式(※2)となっており、介護支援分野から25問、保健医療福祉サービス分野から35問の計60問が出題されます。
- 介護支援分野:介護保険制度の概要、制度、仕組みなど
- 保健医療福祉サービス分野:医療知識、高齢者支援展開論、ご高齢者の疾患、介護技術、保健医療サービス各論、相談援助、福祉サービス各論など
(※2)5つの選択肢があり、その中から「正しいもの」「誤ったもの」など、設問で指定した条件のものを複数選ぶ形式のこと。例:「後期高齢者医療制度について正しいものはどれか。3つ選べ」
1問1点で満点は60点。例年、各分野で7割の点数がとれれば合格ラインといわれていますが、決まった合格基準点があるわけではありません。合格ラインは年によって変動すると考えておきましょう。
法改正などについて変更のあった年は、その分野に関する内容が出題されやすい傾向にあります。2018年4月に介護保険制度が改正されましたので、改正された理由や状況、改正後の変更点などはしっかりチェックを。
ケアマネジャー受験資格改正は、高い期待の表れ
介護業界には多くの資格がありますが、そのなかでも専門職であるケアマネジャーは介護のキャリアにおいてひとつのゴールともいえる資格。
活躍の場は居宅介護支援事務所、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など幅広く、一般的な介護職員に比べて給与も多め。ケアマネジャーの国家資格化の構想があることからもわかるように、ケアマネジャーの将来性と周囲からの期待は、いっそう大きくなっています。
介護を受ける人やその家族の悩みや心配を受け止め、良きパートナーとして頼りにされるケアマネジャー。大変ですがそれだけやりがいを感じられる仕事です。
ケアマネジャーの仕事への誇りとやる気を胸に、合格を目指して試験にチャレンジしていきましょう!