介護スキルのアップに欠かせない「観察力」、どう磨く?

使えるハウツー


介護の世界では、「観察が大切」「よく観察して」と言われるけれど、そもそも「観察」ってどういうことなのでしょうか?

介護の観察は、「物」ではなく、生きている「人」が対象。無遠慮にジロジロ見ることが観察ではありません。

おさえるべきポイントを知らないと、「観察したつもり」でお年寄りの大きな変化を見逃してしまうかも。

「あの人はスゴイ!」と言われる介護士さんは、特に優れた観察力を持っていることが多いもの。観察力を磨いていけば、介護スキルもぐんぐんアップしていきます。

その磨き方やコツについて、具体的な例を交えながらご紹介していきます。

観察で忘れてはいけない「客観性」


介護における「観察」とは、利用者の状態や変化を客観的に注意深く見ることです。

この「客観的に」というのが大きなポイント。自分ではきちんと観察しているつもりでも、そこに自分の考え「主観」が入り込んでしまうと、観察ではなくなってしまいます。

たとえば、「機嫌が悪くてオムツ交換を嫌がった」という場合。

「オムツ交換を嫌がった」というのは客観的な事実ですが、「機嫌が悪く」というのは見た人の主観です。

何か周囲の環境に気がかりなことがあったのかもしれませんし、痛みや痒みなどの体調不良があったのかもしれません。

また声のかけ方やタイミングが悪かったのかもしれませんし、単に心の準備ができていなかったのかもしれません。

どうして利用者がオムツ交換を嫌がったのか、本当のところは介護者には分かりません。

分からないことを「機嫌が悪かった」という主観で片付けてしまうと、次に同じことが起こっても、「たまたま機嫌が悪いだけ」「突然怒り出す人」といった浅い推察で終わってしまいます。

ここで目線やしぐさ、利用者の言動をしっかり観察する力があれば、「もしかしてこれが気になるのかな?」「喉が乾いているのかな?」「この言い方が嫌だったのかな?」と推察することができます。

  1. 「主観で決めつけ」るのではなく、「観察して仮説」を立てる。
  2. 仮説に従って試してみる。
  3. 試したことがうまく行けば、仮説が合っていることの裏付けに。うまく行かなければ、(1)に戻ってやり直す。

この3つのステップの繰り返しが、介護のスキルをアップさせていく大きな原動力。

(1)のステップで的確に観察できていれば、(3)でうまく行く可能性が高くなります。ですから観察力を磨くことは、介護スキルのアップには必要不可欠なことなんですね。

どこを観察したらいい?高齢者の観察ポイント


顔色が悪い、本人が痛みを訴えている等、普段と違う様子が認められる場合は、バイタルサイン(脈拍、呼吸、血圧、体温)を確認し、異常がある場合は速やかに医療職へと引き継ぎます。

その際にはバイタルの値に加えて、直近の便や尿の様子、食事や薬の状況などについても報告を求められることがあります。

正確に伝わるように、食欲がない場合も、単に「食欲がなかった」で終わるのではなく、「主菜の1/3を残した」などと数字を使うなどして客観的に表すようにするのがおすすめ。

普段からこれらのポイントをおさえて観察し、得た情報は施設職員で共有しておくようにしましょう。

利用者本人の訴えがなくても肌を触って温かかったり、顔が赤かったりする場合は発熱の疑いが。肌がカサカサに乾燥していれば、脱水状態かもしれません。

便・尿の異常などは分かりやすい観察ポイント。取りこぼしのないようにきちんと観察し、記録に残しておけば、いざというときに役立ちます。

ただ、特にそうした異常がないときにも、普段からよく観察することはとても大切。

いちばんに観察したいのは顔色、表情です。目は口ほどにモノをいうと言いますから、血色が良い、表情がやわらかいなどは良いサイン。

逆に眉間に皺を寄せて、こわばった表情をしている場合は、何かしらの問題ありと考えられます。

目線や体の向き、しぐさや声の調子もよく観察してみましょう。そこには言葉には出さなくても、高齢者の思いや気持ちが現れていることが多いもの。

目を合わせてくれない、声に力がない、下ばかり見ているといった場合には、「何か不安なことがあるのかな?」「体調が悪いのかな?」といった推察をすることができます。

認知症の人はとくに、言葉で表現することが苦手。認知症ではなくても、人は遠慮したり意地になったりして、自分の気持ちを素直に表現できないことがあります。

でもこんなときにこんなしぐさ、言動があったことが観察できれば、「この人はこれがイヤなんだな」「これが好きなんだな」「こういうことはしたいけれど、こういうことはしたくないんだ」ということが分かりますよね。

上手な観察には、その人の表情や声の調子、姿勢やしぐさといった、言葉以外の情報を集めることも大切です。

観察は、介護士が介護される人の気持ちを知るためのツールでもあるのです。

一人ひとりに合わせて観察の目をカスタマイズしよう

「この人はここを重点的に」「この人はこういう傾向があるから、特によく見ておこう」といった具合に、観察は、その人の個性や事情に合わせてカスタマイズしていきたいもの。

「お彼岸にお墓参りに行きたい」「来週の孫の結婚式に参加したい」といった目標があるなら、歩行の状態や排尿の間隔なども大切な観察ポイント。

相手によって重点的に見る観察ポイントを変えることで、より役立つ情報を集めることができます。

さりげなく相手に合わせて観察するには、 やはり現場で積み重ねた経験も必要です。 専門校で習得したテキスト通りの知識や技術だけでは、すぐに観察ポイントを的確につかむのは難しいでしょう。

分からなければ、どんどん先輩介護士や職員など、周囲の人に聞いてみましょう。

ピンと来ることと、来ないことがあるかもしれません。でもそれらの観察ポイントを参考にいろいろと試していくことで、自分なりの観察ポイントがつかめてきます。

また、すぐにはうまくいかなくても、相手のことを分かりたいと思う気持ちは必ず相手に伝わるので、信頼関係を築くことに役立ちます。あせらず、マイペースで取り組んでみてください。

観察力を下げる一番の敵は「決め付け」


人を対象にする介護での観察は、その人に合わせて行うものなので、「AのときはBする」といった紋切り型のマニュアルにすることは難しいものです。

ただひとつ言えることは、「決め付けは観察力を下げてしまう」ということ。

自分の考えで相手を「怒りっぽい人」「頑なな人」と決めつけてしまうと、必要な情報が目に入らなくなってしまいます。

観察は、「相手を知ろうとする感性」と言ってもいいかもしれません。

感性を磨いて、相手の心が訴えていることを推し量る・・・それは介護職のすべてのスキルを格段に押し上げていく底力。

難しいことですが、それだけにやりがいも大きいものです。利用者の方の気持ちに寄り添えるよう、「見る」「聞く」「感じる」をたくさん使って毎日の経験を積み上げていってくださいね。

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