近年介護業界で、じわじわと人気が高まりつつあるのが「派遣」という働き方。「時給が高め」「人間関係が気楽」「自分の都合に合わせて働ける」など、メリットが多いことがその理由です。
今回はまず派遣の種類についてお伝えしたうえで、介護職が派遣で働くメリットをひとつずつ詳しく解説。さらにデメリットや自分に合った派遣会社、派遣スタイルの選び方についてもご紹介します。
介護職に興味のある方、介護分野で求職中の方、直接雇用から派遣に切り替えようか迷っているという方はぜひ参考に。幅広い選択肢から、自分にとって一番快適な働き方を見つけてくださいね。
介護派遣ってどんな働き方?
職場である介護事業所と個人が直接、雇用契約を結んで働く「直接雇用(正職員やパート・アルバイト)」に対し、「介護派遣」では、介護事業所と自分との間に派遣会社が入ります。雇い主は派遣会社で、給与も派遣会社から支給されますが、実際に働く場所は派遣先の介護事業所になります。
派遣には「登録型派遣(有期雇用派遣)」、「常用型派遣(無期雇用派遣)」、「紹介予定派遣」の3つの形態があります。派遣というと「安定性や将来性が不安」といったイメージがあるかもしれませんが、常用型や紹介予定派遣なら安心して長く働くことが可能。自分に合った派遣のスタイルを選ぶことで、派遣のメリットを最大限活かしながら働くことができます。
◎登録型派遣(有期雇用派遣)
雇用期間に限りがある雇用形態。派遣会社に登録後、派遣期間だけ就業し、就業した期間だけ派遣会社から給与が支払われる。一般的に派遣といえばこれを指すことが多い。
◎常用型派遣(無期雇用派遣)
雇用期限に限りがない雇用形態。派遣会社に採用された時点で賃金が発生し、派遣先で就業していない間も派遣会社から給与が支払われる。
◎紹介予定派遣
派遣先で正職員・契約職員になることを前提に、一定期間派遣職員として働く働き方。派遣期間の終了後、本人と派遣先の事業所の双方が合意すれば直接雇用(正職員や契約職員)となる。
派遣が介護職に人気ってホント?
実は今、介護分野で働く派遣社員の数は増加中(令和元年の調査で30,233人だった介護の派遣労働者数は、令和5年には36,963人と約22%増加※)です。
その理由として、下記のような派遣のメリットが広く知られてきたことや、またそのメリットが現代社会のニーズにマッチしていることが考えられます。
参考資料:労働者派遣事業の事業報告の集計結果について(厚生労働省HP)
介護職が派遣で働く6つのメリット
(1)直接雇用と月給が変わらないか、やや高め
(2)シフトの都合を選びやすい
(3)人間関係が濃くなりにくい
(4)職場を変えやすく、さまざまな経験が積める
(5)契約外のことはしなくてよい
(6)派遣会社のサポートが受けられる
(1)直接雇用と月給が変わらないか、やや高め
派遣の特徴のひとつは、時給相場が正職員やパート・アルバイトといった直接雇用よりも高めになること。その理由は、介護事業所が採用活動の手間やコストを省ける分に加え、賞与や昇給がない分などが考慮され、働く人の給与に反映されているためです。
月給も、賞与を含まなければ直接雇用よりも高めになることが多いので、「出るか出ないかわからないボーナスより、毎月のお給料でしっかり評価して欲しい」という人には派遣が向いているかもしれません。
(2)シフトの都合を選びやすい
派遣で働く際には、派遣会社が介護事業所との間に入り、スタッフの希望として「働けるのは○時から○時まで」「○曜日は休み」など最初にしっかり伝えてくれています。それを先方が了承したうえでの契約となるので、自分の働きたい時間、働きたい曜日を自由度高く守って働くことができます。家事、育児などと両立したい人、空いた時間を活かしたい人にとっては魅力的なシステムと言えるでしょう。
(3)人間関係が濃くなりにくい
派遣職員は正職員とは雇い主が違うため、「仲間」というよりは「助っ人」といった立ち位置で認識されることが多くなります。そのため派閥争いのような人間関係のトラブルには巻き込まれにくいのは大きなメリット。もしも人間関係にトラブルを抱えてしまった場合でも派遣会社に相談して、契約満了を待って別の職場に派遣してもらうことも可能なので気が楽です。
(4)職場を変えやすく、さまざまな経験が積める
派遣の契約は3ヵ月程度と比較的短期間に設定されていることが多いので、「そろそろ違う職場で違う経験を積みたい」と思ったら、契約が切れるタイミングを利用してスムーズに職場を変えることができます。
派遣先が変わるだけなので、履歴書の経歴欄が増えないのもメリット。直接雇用よりも職場を変えるハードルが低いので、いろいろな職場を経験してみたい人、さまざまなスキルを積みたい人にはおすすめです。
(5)契約外のことはしなくてよい
派遣の仕事内容は契約書に細かく記載されており、契約外のことは指示されてもする必要がありません。というより、トラブル回避のため事業所側は指示しない、スタッフ側は引き受けないことがルール。
そのためたとえば「入浴介助業務」で派遣されているのに、「今日は入浴介助はいいから食事介助をして」「来客対応をして」などとイレギュラーな指示をされることがありません。得意なことと不得意なことがあって、得意なことだけやりたいという人や、集中的に磨きたいスキルがある人にはぴったりの働き方と言えるでしょう。
(6)派遣会社のサポートが受けられる
派遣会社にもよりますが、サポートが手厚い派遣会社であれば、仕事で困ったことや悩みごとを担当者に気軽に相談することができます。また仕事上のアドバイスだけでなく、「時給を上げて欲しい」「ライフスタイルが変わったので就業時間を変えたい」など、派遣先との交渉ごともお任せできます。
直接雇用の場合はこうした交渉も自分でしなくてはならず、少なくないストレスに。派遣の場合は希望を派遣会社に伝えたら、自分は仕事に集中できるのはうれしいメリットですね。
派遣のデメリット3つ
続いて派遣のデメリットもしっかりと確認していきましょう。世間でよく言われる派遣のデメリットは、大きく以下の3つです。
- 基本的に出世がない(キャリアップや昇給が難しい)
- 契約満了や3年ルールなどで長く働き続けられない可能性
- 将来的に収入が大きく増える可能性が少ない
これらは「登録型派遣(有期雇用派遣)」の避けられないデメリットです。人間関係が濃くなりにくいメリットや、職場を変えやすいメリットと引き換えになるのがこれらのデメリット。しかし出世に興味がない、収入を大きく増やさなくても構わないという人には気にならないデメリットでしょう。
この3つのデメリットが気になる人、つまり「将来的に出世をして収入を増やしていきたい」「同じ職場で長く働き続けたい」という人には、上で紹介した「常用型派遣(無期雇用派遣)」や「紹介予定派遣」がおすすめ。
とくに、派遣として数ヵ月働いてから職場と本人の合意のもとで直接雇用に移行する「紹介予定派遣」では、派遣会社のサポートというメリットを享受しつつ、3つのデメリットをなくすことができるので、効率良く自分に合う職場を見つける良い方法と言えるでしょう。
派遣で快適に働くための注意点は?
派遣で快適に働くためには、派遣会社選びがとても大切です。派遣会社によって持っている求人情報の数や質はもちろん、地域情報に詳しいかどうか、福利厚生や資格取得の支援制度、就業中のサポートの手厚さなども異なりますので、登録前にしっかり調べておきましょう。
また派遣会社の担当者との相性も要チェック。最初はノリが良くて話しやすいと思っても、約束したことにきちんと対応してくれなかったり、逆に初めは話しにくくても後から誠実さが伝わってきて何でも話せるようになったりしますから、第一印象だけで決めつけずある程度長い目で見て見極めたいところです。
初めから運良く自分にぴったりの会社や担当者を見つけられることは少ないので、最初は2~3社候補を挙げて登録しておき、様子を見て絞り込んでいくのが良いでしょう。
こちらのコラムも参考に≫「介護の派遣会社の失敗しない選び方。登録後の流れも知って安心!」
派遣が向いているのはこんな人
それでは最後に、派遣で働くのが向いている人の特徴をまとめておきましょう。
- 職場選びに失敗したくないのでプロのアドバイスが欲しい人
- できるだけ高い時給で働きたい人
- 家事・育児などで忙しく、決まった曜日・時間しか働けない人
- 職場の人間関係を煩わしく感じる人
- 面倒な交渉ごとは専門家に任せたい人
- いろいろな職場を経験してみたい人
- 得意なことなど、決まった仕事だけやりたい人
- 出世に興味がない人
安定して長く働きたい人や、将来的には出世して収入を増やしていきたいという人は、「登録型派遣」ではなく「紹介予定派遣」で、正職員への道を開くのがおすすめ。派遣会社の担当者に、希望する旨を伝えてみてください。人それぞれに異なる事情や希望、条件に合わせて、柔軟に働けるのが派遣のメリットです。読んでみてピンとくるものがあった人はぜひ、派遣という働き方を前向きに考えてみてくださいね。