介護職においては利用者様との会話も仕事のうち。しかし無口な利用者様の場合、話しかけてもなかなか会話が始まらないこともありますね。あれこれと話題を変えても会話が広がらず、「もう話すネタがない・・・」ということもあるかもしれません。
今回はそんなときに役立つ会話のコツと、高齢者が興味を持ちやすい話のネタをご紹介します。話の糸口に困ったときのヒントとしてぜひ活用してみてください。利用者様との会話をもっと弾ませたいと思っている介護職の方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
高齢者が興味を持ちやすい会話ネタ
まずは挨拶
会話のネタとは異なりますが、糸口として何より肝心なのが挨拶です。笑顔で、相手の方の名前を添え、「○○さん!おはようございます」「こんにちは」「お久しぶりです」等々、明るい挨拶を心がけましょう。挨拶の印象如何で、その後の会話が弾むかどうかが決まります。挨拶のあとは相手の興味に合いそうなネタで話しかけてみましょう。
【高齢者が興味を持ちやすい会話ネタ9選】
- 健康・体調に関する話
- 好きなテレビ番組の話
- 旅行の話(以前に行って良かった場所、行ってみたい場所など)
- 家族や孫の話
- ペットの話
- 食事の話(お気に入りの店やメニュー、商品など)
- 野球や相撲などのスポーツネタ
- 趣味関係(カラオケ、音楽鑑賞、家庭菜園・ガーデニング、日曜大工、カメラ、編み物、手芸、パソコンやスマホ、絵手紙、俳句、生け花、料理、囲碁、将棋など、その人が興味を持ち熱中していることについて質問してみる)
- ボランティア活動(町内会や地域の見守り活動など、その人がやっている/やっていた活動について質問してみる)
外見・服装を褒める
おしゃれな利用者様にはぴったりの話題。いつもと違う服装や持ち物などに気付いたら、「今日のセーター、すてきな色ですね」「○○さんの雰囲気にぴったりですね」などと声をかけてみましょう。そこから話題が広がることもありますし、もし会話がそこで止まったとしても、褒められて嫌な気分になる人はいません。明るい気持ちになり、「少し話してみようか」という気になることも。
変化に気付く
たとえばリハビリをがんばっている利用者様に「最近ずいぶん調子が良さそうですね」「効果が出ていますね」など。「人の目から見ても良くなっているんだな、今日もがんばろう」と前向きな気分になれます。そこから、がんばったことや良くなったこと、以前の苦労話といった話につながっていけば、きっと会話も盛り上がることでしょう。
以前の話題の続きをする
「その後、膝の具合はいかがですか?」「そういえばお孫さんが来られたんですよね、どうでした?」など、以前話した話題を会話のネタにするのもおすすめ。会わない間も自分のことを忘れず、気にかけていてくれたんだなとうれしくなります。職員と会話することにも前向きになれるのではないでしょうか。
教えてもらう
介護が必要になるとどうしても自己肯定感が下がりがち。だからこそ人から頼られたり、感謝されるのはうれしいものです。その方の得意なことを教えてもらうスタンスで話しかけると、いろいろとお話ししてくれることも多いでしょう。
女性なら旬の食材の料理法や子育ての悩みを相談してみたり、男性なら過去の経歴から得意分野のことを聞いてみるのもおすすめ。自分にとっても有益な情報がもらえるので、まさに一石二鳥です。
無理に話題をふらず、黙っておく
ムリに話題をひねり出して話しかけても、そのムリは相手に伝わります。何も思い浮かばないときは黙っている、という選択肢もアリ。ただそのときも、真顔で黙っているのではなく目を合わせて微笑みかけたり、「ここにいますので、何かあればおっしゃってくださいね」と声をかけるなどのアクションをとるようにしましょう。
一番よくないのは、たとえば「○○さんは将棋が好きだから」と将棋の話題をふっておきながら、実は将棋に詳しくなく、興味も持てないパターン。話している方も、実は相手に興味がなさそうだと気付けば、だまされてしゃべらされたように感じてプライドが傷つきます。話題をふったからには最大限の興味を持って話を聞く姿勢が重要です。
高齢者と話すときのコツ
ゆっくり話す
高齢になると、耳から入ってきた情報をかみ砕いて理解するまでに少し時間がかかるようになります。ですからまずは「ゆっくり話す」ことが重要です。早口で一気に話してしまうと、相手の頭に入っていきません。普段よりもゆっくりめに話すことを意識していきましょう。
たとえば「○○のことなのですけど」で一呼吸おき、相手の反応を見ます。「このあいだ、○○が気になるとおっしゃっていたでしょう?」でまた一呼吸おき返事を待ちます。「うん?○○?」と返事があったら「そうそう、○○です」といった具合に、ゆっくりテンポで会話を楽しむのがおすすめです。
目を合わせて話す
相手の視界にしっかりと入り、目線を合わせてから話しましょう。目が合っていない状態で話しても、こちらの言葉が届いていない可能性があります。目線を合わせて話すことは、「あなたに向かって話していますよ」というメッセージ。
介護職なら利用者様に話しかけて無視された経験があるかもしれませんが、それは意地悪などではなく、急に視界の外から話しかけたために気付いてもらえていなかったのかもしれません。しっかり目線を捉えてから話しかけるようにすれば、そういったすれ違いが減るはずです。
はっきり発音する
高齢になると、聴覚が衰えて相手の声が聞き取りにくくなります。また、マスクで口元が隠れていることも、声がくぐもって話が分かりにくくなる一因。
聞こえないと、いちいち聞き直すのも面倒だったりプライドが傷つくために、会話自体をしたくなくなる人もいます。マスクでくぐもる分まで計算に入れ、相手が聞き取りやすいよう口をしっかり開け、はっきり発音することを心がけましょう。
聞き役になる
盛り上がる会話のためには、自分が面白い話をして相手を楽しませなくてはならないと思っていませんか? 実はそのスキルは必須ではありません。会話を楽しく盛り上げるために必要なのは、「よい聞き役」。自分の話は控えめに、できるだけ相手にたくさん話してもらうことを重視しましょう。
聞き役が「へえ!そんなことがあったんですか!」と目を輝かせて聞いてくれれば、話し手は興が乗ってさらに話がしたくなります。逆に聞き役が、聞きながら別のことをしていたり、つまらなさそうに目を泳がせていたりすると、話す気もすっかり失せてしまうもの。
会話上手になるために面白い雑学やトリビアのネタを仕入れるのも良いですが、それよりも効果抜群なのが、相手にトコトン興味を持ち、よい聞き役になることです。
こちらのコラムも参考に≫「「傾聴」とは?介護の現場で役立つ聴き方のテクニック」
目の前の相手をよく見れば、聞きたいことが湧いてくる
ちょっとした待ち時間に利用者様と打ち解けて会話を楽しみ、お互いに笑顔になれたらいいですよね。介護の仕事に楽しみが増え、利用者様との関係も深まります。さらに利用者様の何気ない話のなかからたくさんの情報を得ることができ、ケアの質向上にも役立つと良いことずくめ。
時には会話のネタに困ってしまうこともありますが、そんなときは遠くのトリビアを引っ張ってくるより、目の前にいる人をしっかりと見てみましょう。相手に興味を持ってよく観察することによって、話のネタはいくらでも出てくるはず。
「あなたのことを知りたい」「教えて欲しい」、そんな純粋な気持ちから出てきた話題になら、利用者様もきっと抵抗なく乗ってきてくれることでしょう。